未来はあまりに遠いし、おれはもう待てない

SF小説やプログラミングの話題を中心とするフジ・ナカハラのブログ

SF創作講座第8回を終えて

一昨々日、ゲンロン 大森望 SF創作講座 第3期 の第8回講評会が開催された。 今回のゲスト講師は、小川哲氏と、早川書房の奥村勝也 @kokumurak 氏だ。

第8回の課題は「「天皇制」、または「元号」に関するSFを書きなさい。」というもので、23編の梗概が提出された。 私は『式年遷皇』というタイトルのものを書いた。 この講座では、提出された梗概の中から3あるいは4編を講師が選出し、選ばれた受講生は次回までに実作を書くことになっている。 今回、私の作品がその内の1編として選出された。

また、第7回課題「経過時間を設定してください」で選出された3編と自主提出8編の実作講評も行われ、10点+未提出者25名分の25点の計35点が各作品に割り振られた。 今回、私は実作を提出していない。

課題について

課題の詳細は次のようなになっている。

平成という時代が終わるまでの数ヶ月、「天皇制」とは何か、「元号」とは何か、国民全員が改めて考える時期となるでしょう。
こういった内容に踏み込んで自由に創作できるのは、今だけです。

かなり限定されたテーマですので、「天皇制」や「元号」については可能な限り広義の意味で解釈して構いません。(中略)必要とされるのは、SFを通じて初めて可能になる視点から、「天皇制」や「元号」について真摯に考えることです。

かなり攻めたテーマである。 「天皇制」も「元号」も数千年の歴史ある仕組みであり、現代でも大きな意味を持っている。 「必要とされるのは、真摯に考えること」と書かれているが、本当に「真摯に」向き合うとなると生半可なことではない。 それも「SFを通じて初めて可能になる視点から」である。 この点で難易度はさらに上がる。

課題を聞いた瞬間は面白いと思ったが、すぐに厄介なテーマだと感じるようになった。 私自身は、天皇制にも元号にも大した関心を払ったことがなく、高校以前に習った以上のことは何も知らない。 まずは調べるところからだが、やはり興味の薄い分野なのであまり身が入らない。 「SFを通じて初めて可能になる視点」となるとさっぱり見当がつかなかった。

結局、締切2日前までろくに調査が進まず(年末年始を挟んだこともある)、難しく考えることはやめた。 とりあえず「未来の天皇制」を書けばSFっぽくなるだろう。 また、天皇制に真っ向から立ち向かうとボロが出るので、比較的他人より詳しいコンピュータ・サイエンスっぽい話にすりかえたい。 そんな漠然としたところから梗概を書き始めた。

余談だが、小川氏は「新しい人権または差別を考えなさい」というような課題にするか迷っていたらしい。 前々回の課題で〈血縁差別〉について書いたばかりだったので、「人権」よりは「天皇」で良かったと思う。

作品について

着想はアピール文に書いたとおりである。 講座も8回目ということで、1,200字の梗概(いつも少し超えてしまうが)もだいぶ書き慣れてきた。

講評について

小川氏と奥村氏は丸、大森さんは三角という評価だった。 ただし、小川氏の丸は二重丸・丸・三角の三段階評価の丸といったもので、今回二重丸に該当するものはなかったらしい。

正直、今までのものと比べると自己評価がかなり低かったので、講座での評価は意外だった。 講師の方たちが「ヴァーチャルな天皇」に私自身が考えていた以上の意味を見出していたように感じる。 選出されたので実作を書くつもりではあるが、いかんせん書くことになるとは思っていなかったので苦戦しそうだ……。