未来はあまりに遠いし、おれはもう待てない

SF小説やプログラミングの話題を中心とするフジ・ナカハラのブログ

SF創作講座第7回を終えて

一昨日、ゲンロン 大森望 SF創作講座 第3期 の第7回講評会が開催された。 今回のゲスト講師は、飛浩隆 @Anna_Kaski 氏と、早川書房塩澤快浩 @shiozaway 氏だ。

第7回の課題は「経過時間を設定してください」というもので、23編の梗概が提出された。 ただ、今回私は梗概を提出しておらず、また、梗概講評にも参加していないので詳細はわからない。

私は、前回の「キャラクターの関係性で物語を回しなさい」で梗概が選出されていたので、その実作を書いた。

作品について

まず、梗概講評で指摘された以下の2点に対応するところから始めた。

  1. 主人公の葛藤や成長がない
  2. テーマに新鮮さがない

1に関しては、友人スコットと父親ロバートという別の視点をもつ登場人物を増やし、彼らとの関わりから主人公をもう少し悩ませることにした。

2に関しては、「『すばらしい新世界』に重なる」という大森さんの指摘と、「最近の『毒親』の話が取り入れられるとよい」という溝口氏の指摘があった。 『すばらしい新世界』の社会は、生まれながらの階級社会である。 これを真逆にして生まれながらの平等社会という世界設定を置き、その社会の問題をスコットに語らせることにした。 次に、スーザン・フォワード『毒になる親』を読んで、「毒親」の話を持ち出す役割をロバートに与えた。

ここまでで約10日ほどかかってしまった。 梗概講評から実作提出まではたった22日しかない。 すでに半分弱である。

選出されたからには、提出できない事態だけは避けたい。 ということで、いったんたたき台となるものを書くことにした。 そして、それが完成した段階で締切がきてしまった。

もちろん、納得のいくものはできていない。

何より、扱うテーマが大きくなりすぎた。 梗概は、親子の愛を〈血縁差別〉で否定する、という単純な構造だった。 しかし、スコットが〈血縁差別〉による否定を批判し始めたので、話がややこしくなってしまった。 また、「毒親」の話もいまいち咀嚼できていなかったので、ロバートも無理やり喋らされる感じになっている。 最後はロールズの無知のヴェール的なところに着地させたが、結論ありきだったので前段の話と噛み合っていない。 世界観やテーマの主軸を詰める余裕がなかったので、全体的に議論が抽象的でふわっとしている。 ただ、仮にその辺りを詰めた場合、短編に収まらない気もする。

終わってみて、梗概のまま自分の手に収まる範囲で書けばよかったと少し後悔している。 思えば、第2回で書いた実作『サイボーグ・クラスメイト』のときもそうだった。 次書くときは、他人の意見を真に受けすぎず、自身の軸がぶれない範囲で書くようにしたい。

講評について

案の定、醍醐味となるべき価値観の転換がうまくいっていないという評価だった。 記憶が曖昧だが、飛さんからは「皮膚感覚で伝わるものがない」というようなコメントをいただいた。 「皮膚感覚」という言葉は意外だったが、腑に落ちるものがある。

点数は飛さんからの1点のみだった。 2回選出されて両方1点で、さらに実作提出回は梗概を出せていないため、梗概を毎回提出している生徒と合計点は同じになっている。 まあ、選出されたうえで1点というのはそうそうない低評価なので、よっぽど書けてないんだろうな……。

SF小説ではないけれど、『ハンター・ハンター』や『レベルE』の冨樫義博も連載デビュー作は『てんで性悪キューピッド』だったわけで、初期の作品からはまったく思いもよらない作品が生まれることもある。 それを励みにがんばりたい。